高層ビルに強固な基礎は必須?
高層ビルのプロジェクトで最も高額な判断は、1階が立ち上がる前に下されます。杭をどこまで打ち込み、どの地層に先端を支持させるか、という判断です。この判断の質は、根拠となる地盤データの質で決まります。ボーリングの本数が少ない、深さが足りない、試験の組み合わせが適切でない、といった地盤調査は、杭長の変更、追加工事、数量をめぐる紛争、さらには供用後の沈下につながるおそれがあります。
施工者にとってリスクは何層にも重なります。実際の地盤が入札時の前提と異なれば、工程とコストの負担は施工者に及ぶからです。本稿では、高層ビルの地盤調査で何を求め、何を確認し、何を押さえるべきかを、試験方法から報告書の読み方まで整理します。基礎を「想定」ではなく「データ」で決めるための実務ガイドです。

将来の高層ビル用地でのボーリング調査が、基礎判断の根拠になります。
高層ビルの地盤調査とは何か
地盤調査(ソイルインベスティゲーション)とは、現場での調査と室内試験を組み合わせて、地層構成、各層の強度と圧縮性、地下水位を把握する一連の作業です。その結果は基礎設計と掘削計画の根拠になります。高層ビルでは、基礎形式、杭の深さ、地下掘削の山留め方針を左右します。
日本では、建築基準法施行令第93条が、地盤の許容応力度と基礎ぐいの許容支持力を、国土交通大臣が定める方法による地盤調査の結果に基づいて定めるよう求めています。調査方法と結果の用い方は、平成13年国土交通省告示第1113号に定められています。一方、インドネシアでプロジェクトを進める場合は、SNI 8460:2017(地盤工学設計要求事項)が地盤工学全般の基本的な基準です。基礎、深い掘削、土留め構造、耐震の側面を対象とし、地盤データの章で、予備調査、設計段階の調査、施工中の調査結果の適合性確認といった段階的な調査計画を規定しています。
インドネシアの許認可面では、政府規則2021年第16号(PP 16/2021)に基づく建築承認(PBG)の書類に、土地の技術データと地盤調査結果が含まれます。同規則の説明資料によれば、2階建てまでの建築物は地盤調査の添付が義務付けられておらず、高層ビルではこれらのデータが専門家チーム(TPA)による技術書類の審査の対象になります。
地盤データが不十分なときに起きること
設計変更と数量の増加
地盤の不確実性は、ほぼ必ず金額に跳ね返ります。英国の構造技術者協会(Institution of Structural Engineers)の論文は、地盤調査費は通常、下部構造費の約2%、建物全体のコストの約0.1%にすぎない一方、地盤に関する問題が工程遅延の3分の1から2分の1を占めると述べています。これは英国の建築プロジェクトに基づく数字であり、インドネシアの基準値ではなく、比率の感覚をつかむ目安として読むのが適切です。
米国の全米共同高速道路研究計画(NCHRP)による道路工事の研究にも、同様の傾向があります。クレームや変更指示の一般的な原因として、杭の数量超過や、想定より浅い地下水位が挙げられています。対象は道路であって建築ではありませんが、仕組みは同じです。初期データが実際の地盤を代表していなければ、その差は追加工事として現れます。
沈下と傾斜
サンフランシスコのミレニアム・タワーは、しばしば教訓として引かれる事例です。58階建てのこの建物は、厚さ約3mの基礎スラブを、約940本のプレキャストコンクリート杭が支えています。杭先端は深さ約15〜26mの締まった砂層にあり、岩盤はその砂層の下、45m以上も深い位置にあります。Structure Magazineによれば、2015年までに沈下量は16インチ(約41cm)を超え、訴訟に発展しました。その後、岩盤に達する杭を追加する約1億ドルの基礎補強が実施されました。
沈下の原因は当事者間で争われています。開発側は隣接するトランジットセンターの工事を指摘し、トランジットセンター側は、岩盤に達しない基礎設計を原因と主張しました。施工者にとって安全な教訓は、どちらが正しいかではなく、杭先端の支持深度、その下の地層の状態、周辺工事の影響を、調査と計測の計画に初期から含めておくことです。
地震荷重とサイトクラス
地盤データは地震荷重も左右します。SNI 1726:2019は、地表から深さ30mまでの地盤プロファイルに基づき、せん断波速度、N値、非排水せん断強度などの指標で、サイトをSA(硬岩)からSF(特殊地盤)まで分類します。SE(軟弱地盤)は、平均N値が15未満であることなどを特徴とします。SFは、サイト固有の地盤調査とサイト応答解析を必要とします。
一例として、ディポネゴロ大学の卒業研究では、スマラン市の病院建築の3地点のボーリングから平均N値が約11.3と算出され、サイトはSEに分類されています。学術的な事例であり、すべての地点を代表するものではありませんが、軟弱地盤の多い沿岸部では、調査結果が構造設計者の使う応答スペクトルを直接変えることを示しています。
地盤調査の主な方法
高層ビルの調査は、ほぼ必ず複数の方法を組み合わせます。方法ごとに答えられる問いが違うからです。以下に整理します。
| 方法 | インドネシアの基準(日本の基準を併記) | 得られるもの | 高層ビルでの留意点 |
|---|---|---|---|
| ボーリングと標準貫入試験(SPT) | SNI 4153:2008(SPT)、SNI 2436:2008(コア掘削記録)/日本:JIS A 1219 | 地層構成、深度ごとのN値、試料 | 支持層深度と地下水位を判断する中心的な根拠 |
| コーン貫入試験(機械式サウンディング、CPT) | SNI 2827:2008 | 先端抵抗と周面摩擦 | ボーリングを補完。硬い層では装置容量が深度を制限することがある |
| 乱れの少ない試料採取 | SNI 03-4148.1-2000(薄肉チューブ) | 室内試験用の粘性土試料 | 沈下を支配する軟弱粘性土で重要 |
| 室内土質試験 | SNI 4813-2015(UU三軸)、SNI 2812-2011(圧密)など | せん断強度、圧密、物理特性 | 支持力と長期沈下の解析の根拠 |
| 杭の載荷・動的試験 | SNI 8459:2017(高ひずみ動的試験)など | 施工後の杭の支持力の確認 | 施工段階の確認であり、事前調査の代替ではない |
標準貫入試験(SPT)は、JIS A 1219に基づき、質量63.5kgのハンマーを76cmの高さから落下させてサンプラーを打ち込む試験です。15cmの予備打ちの後、30cm貫入させるのに要した打撃回数をN値とし、打撃回数の上限は一般に50回とされます。インドネシアの実務では、N値が約50以上の層が3層連続した場合を支持層(硬質地盤)の目安とすることが多く、ディポネゴロ大学の論文が公共事業・国民住宅省の2021年版土質試験技術マニュアルとして引用しています。ただし、支持層の基準はプロジェクトごとに定められるため、必ず仕様書で確認してください。サンプラーの選択にも指針があり、ある日本の地質調査報告書では、N値が3〜4以下程度の軟らかい粘性土には固定ピストン式シンウォールサンプラー、N値5〜8程度の中位の粘性土にはデニソン式、N値8〜10以上の硬い粘性土や砂質土にはロータリー式三重管サンプラーを用いたとされています。
CPTは地盤の応答を連続的に記録できる点で優れ、SPTは実物の試料を観察・試験できる点で優れます。両者は補完関係にあり、N値とコーン抵抗の相関は土質に大きく依存するため、機械的な換算に使ってはいけません。

SPTサンプラーを開き、特定の深度区間で採取した土を確認します。
高層ビルではボーリングを何本、どの深さまで行うか
結論から言えば、決まった数字はありません。点数と深さは、平面の面積と形状、地盤のばらつき、基礎形式、荷重によって決まります。SNI 8460:2017は調査計画を段階的に進めるよう求めており、計画は地盤工学の専門家が予備調査の後に調整します。日本では、地盤工学会の「地盤調査の方法と解説」や日本建築学会の「建築基礎構造設計指針」が実務の拠り所になります。
参考として、地盤工学の文献には一般的な目安があります。これはSNIの要求事項ではありません。面積約250m²で最低3か所、約1,000m²で約5か所、地点は基礎位置の近くに置くという目安です。杭基礎では、杭先端より下の地盤まで調べる必要があります。Eurocode 7は、想定される杭先端標高の下、杭径の約5倍の深さを示唆しています。均質な地盤の大規模な杭群は、杭長の3分の2の深さにある等価ラフトとしてモデル化されることが多く、応力の影響範囲はそれより下に及びます。
地域的な比較として、シンガポール建築建設庁(BCA)の杭に関する要求事項の要約には、300m²あたり最低1本、地点間隔10〜30m、最低3本、N値100超の硬質層へ5m、または杭先端から杭径の3倍の深さ、という記載があります。あくまで比較であり、インドネシアの法的根拠ではありません。

高層ビルの調査は、敷地平面の複数の地点で行われます。
地盤データから基礎の意思決定へ
データがそろったら、設計者は基礎形式を選びます。支持層に先端を支持させる支持杭、摩擦杭、べた基礎(ラフト)、杭とラフトを組み合わせたパイルド・ラフトなどです。ディープ・ファンデーションズ・インスティテュート(DFI)の高層ビル向けパイルド・ラフトの論文は、ボーリングから地盤を特性化して地下モデルを作り、経験的な相関から基礎の設計パラメータを導き、段階的に解析する手順を説明しています。論文中の事例では、従来の場所打ち杭案に比べてコストと工期の削減が報告されています。
施工者にとっては、地盤データの質が最適化の余地を決める、ということです。データが薄ければ設計は保守的になります。データが良ければ、安全なバリューエンジニアリングが可能になり、たとえば平面全体で一律の杭長ではなく、ゾーンごとの杭長を検討できます。

高層ビルの基礎工事で、場所打ち杭の鉄筋かごを孔内に吊り降ろします。
推奨する地盤調査の進め方
- 予備調査(机上調査)。 地質、地図、敷地周辺の既存調査データ、敷地の履歴、隣接構造物の状態を集めます。
- 調査計画の策定。 基礎の初期配置と掘削の要件から、点数、位置、深さを決めます。
- 現場調査。 SPTを伴うボーリング、コーン貫入、乱れの少ない試料採取、地下水位測定を行い、地盤工学の担当者が直接立ち会います。
- 室内試験。 土質と設計上の課題に応じて試験を選びます。たとえば沈下を支配する粘性土には圧密試験を行います。
- 解釈と報告書。 地盤プロファイル、設計用パラメータ、基礎の提案、データの限界が報告書に含まれていることを確認します。
- 施工段階での確認。 実際の地盤を設計の前提と照合し、杭の試験を行い、乖離があれば設計を調整します。
施工者のための地盤調査報告書チェックリスト
- 点数と配置が、コア部や地下部分を含め、平面全体をカバーしている。
- ボーリング深さが、計画杭先端を、地盤工学の専門家と合意した余裕をもって超えている。
- 支持層が1点のN値だけでなく、複数の点で確認されている。
- 地下水位が、観測日と季節の状況とともに記録されている。
- ボーリング柱状図、コーン貫入結果、室内試験が互いに整合している。
- SNI 1726:2019に基づくサイト分類が、算定根拠とともに記載されている。
- 基礎の提案、設計パラメータ、データの限界が説明されている。
- 調査会社、日付、機器、方法が明確に文書化されている。
避けるべきよくある誤り
第一に、初期費用を抑えるために調査範囲を削ることです。前述のコスト比率が示すとおり、この段階での節約はリスクに比べて小さなものです。第二に、1本のボーリングで敷地全体を代表させることです。地層は短い距離で変化し得ます。第三に、単一のN値を、その硬質層が十分な厚さを持つのか、軟らかい地盤の上の薄いレンズにすぎないのかを確かめずに読むことです。第四に、現場の所見が想定と食い違ったとき、設計の前提を更新しないことです。
地盤データと設計調整をつなぐ
地盤調査報告書がそろったら、次の課題は、全分野が実際にそのデータを使うことです。杭の位置、地下掘削の深さ、山留め壁、設備の経路、隣接構造物は互いに影響し合います。地層データと基礎配置を1つの3次元モデルで示せば、杭、パイルキャップ、地下外壁、地下埋設物の干渉を、着工前に見つけやすくなります。
BIM(Building Information Modeling)のアプローチは、この調整を支えることができます。ただし、BIMは地盤調査の代わりにはならず、すべてのプロジェクトで自動的に必要になるわけでもありません。価値は情報の統合にあります。専門性のある地盤調査会社の成果を調整モデルから参照できるようにすることで、構造、意匠、設備の判断が同じ情報に基づくようになります。
まとめ
高層ビルは非常に大きな荷重を地盤に伝えるため、地盤を知ることは付加的な作業ではなく前提条件です。よく計画された地盤調査は、SPTを伴うボーリング、コーン貫入、乱れの少ない試料、室内試験を組み合わせ、点数と深さを地盤工学の専門家がSNI 8460:2017とプロジェクトの条件に基づいて決めます。その結果が、基礎形式、杭の深さ、地震荷重のサイトクラス、コスト最適化の余地を左右します。
施工者にとって最も実践的な行動は、入札前と動員前に地盤調査報告書を批判的に確認し、上記のチェックリストを使い、施工中に設計の前提を検証することです。十分な調査にかかる費用は、プロジェクトの途中で変更に対応する費用よりも、ほぼ常に小さくなります。
高層ビルのプロジェクトを準備中、または見直し中ですか? プロジェクトのニーズについて、Fujiconのチームにご相談ください。地盤調査データを設計調整でどう参照できるか、基礎、地下、設備の干渉を避けるためのBIMのアプローチなどを、一緒に整理できます。初期段階の相談は、基礎の判断が固まる前に、地盤工学コンサルタントや設計者へ適切な問いを立てる助けになります。
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参考文献
- SNI 8460:2017 地盤工学設計要求事項、Bina Marga(インドネシア語)
- PP 16/2021およびPP 28/2025に基づくPBG・SLFの説明資料(インドネシア語)
- Institution of Structural Engineers:地盤リスクに関する論文
- Structure Magazine:ミレニアム・タワー
- Dezeen:ミレニアム・タワー
- Undip土木工学誌:サイトクラス(インドネシア語)
- Undip卒業研究:SPTに基づくサイト分類(インドネシア語)
- Undip論文:ディープボーリングと支持層の定義(インドネシア語)
- Structville:ボーリングの本数と深さ
- BCAシンガポール:杭の要求事項の要約
- Deep Foundations Institute:Economic Foundation Design for Tall Buildings